棘/為平 澪
詩集を本棚から探していると 中指に小さな棘が刺さった
複雑に絡まった女同士の霊(ち)を
読み解く方法があったなら 私は重荷を捨てて
やすやすと違う名字の人と 暮せただろうか
古家
あまりにも濃い血をもつ 女同士の住処
距離も依存も馴れ合いも我が儘も屁理屈さえも
鏡に映して叩き壊せば 綺麗な朝は笑顔で訪れた
間に居た父が亡くなり
お互いがお互いを監視しながら 自由に生きたいと叫び
悦ぶことも手放すこともできないまま
手を繋げば繋ぐほどに 息苦しいだけの私たち
背表紙に棘を忍ばせていた その詩集は
母親の名を二重線で消し
産道から生まれたのは 自分と恋
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