耳朶/あおい満月
 
熱を帯びた大地の上に
呼吸を繰り返す大地の上に
赤いひとつの影がある

影は、
一度爪を立てると
じわりとひろがり大きくなる
大きくなった影は足を持ち
大地を駆けていく

影から生まれた風が
大地を真っ赤に染め上げていく
止まらない哀しみに似た痛み


誰かがドアを叩く
私はドアを開けることが出来ない
ドアを叩く音が激しくなる
外は雨が降っている
雨音とのふたつの音が脳髄を食んでいく

苦し紛れにドアをあけると
雨にぐっしょりと髪をぬらした
あなたが立っていた

タオルで包み込む
私の腕の確かな血の流れる音を感じる
包み込みながら、
私はあなたを抱きしめる
愛おしいものがすぐそばにいても遠い

耳朶に舌を絡ませて
いつもの約束を
永遠はいらない

戻る   Point(3)