耳朶/あおい満月
熱を帯びた大地の上に
呼吸を繰り返す大地の上に
赤いひとつの影がある
影は、
一度爪を立てると
じわりとひろがり大きくなる
大きくなった影は足を持ち
大地を駆けていく
影から生まれた風が
大地を真っ赤に染め上げていく
止まらない哀しみに似た痛み
*
誰かがドアを叩く
私はドアを開けることが出来ない
ドアを叩く音が激しくなる
外は雨が降っている
雨音とのふたつの音が脳髄を食んでいく
苦し紛れにドアをあけると
雨にぐっしょりと髪をぬらした
あなたが立っていた
タオルで包み込む
私の腕の確かな血の流れる音を感じる
包み込みながら、
私はあなたを抱きしめる
愛おしいものがすぐそばにいても遠い
耳朶に舌を絡ませて
いつもの約束を
永遠はいらない
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