窓/宮内緑
玄関の小窓から積もっていく雪をみていた
ポーチに雀がやってきて、しばらく隅っこをつついて
また雪の中へ飛び立っていった
常夜灯の下に埃のように干からびていた夏の羽虫は
箒の手をかりることなく、冬に消え果てた
***
それは天邪鬼のすることだと、少年は叱られていた
窓を開けたままにしていたのを母にみつかってしまったのだ
室(へや)の中はすっかり冷えてしまっている
たしかに南の平野部では雪が舞うことすらめずらしい
ましてや大通りまでも雪にうもれた景色など
少年はほとんど見たことがなかった
遊びつくして夕間暮れ、少年は長靴の雪をはらい、話もほどほ
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