野良/為平 澪
 
ご主人様を探す野良、愛に渇いてしまう野良 
赤い首輪も良いけれど、首根っこを強く掴んで欲しい 
目を離す隙もないほど、息苦しいくらいの視線が欲しい 
でも、ご主人様は優しくて、野良がご主人様を喰ってしまう 
どんな主人も野良の「主人」になれなくて 
愛に渇いてしまう野良、ご主人様を探す野良 
           ※ 
聞き耳立てて、口コミ、垂れ込み、しゃがみ込み、 
啼いて叫んで日が暮れて 名前を呼んでと啼いた日に 
野良につける名はないと 家にあげてくれた人 
男は野良の裏と表を使い分け、自由気ままに弄び  
首に見えない赤い紐、上手に結んでくれた人 
           ※ 
((野良よ、野良よ、どこにいる? 
やがて月日は反転し、主人は野良がいなけりゃ、息出来ぬ 
ご主人様は泣き続け、野良は主人をかわいがる 
           ※ 
野良よ、野良よ、と何度でも 幾度も何時でも呼ばれる程に 
野良は主人の顔をして 主人に猫の名を付ける
戻る 編 削 Point(6)