すんでのところ/坂本瞳子
 
鍵が合わない
鍵を合わせる
洞窟の通路を進んで
行き止まりにある扉の
ノブは錆びていて
左手に抱えた鍵の中から
その一本を探し当てる
早くしないと一つ目の
巨人が此処にやって来る
擦り切れたかじかんだ手で
一本ずつ鍵を穴に差し込む
まるで受け付けられない
鉄の棒もあれば
途中までしか差し込むことが
できない棒きれもあるけれど
早くしないと蜘蛛が降って来る
蛇が這って来る猛犬どころか
想像し難い獣が襲いかかって
来るだろうけれども
松明掲げた一つ目の巨人は
そこやかしこを曲がりつ戻りつ
足音を響かせて近づいてくる
早くしないと捉えられる
妖精が飛んで来て
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