三日月/あおい満月
 
目のなかを
突っ切っていくものは
刃に似た針の先
それは誰も何も寄せつけない
冷たさを持つ三日月

それは私の角膜を突き破り
網膜を切り裂いた
何も見えなくなった私は
かつて見えていた光の階段を
昇っては降り繰り返した

手のひらに
わずかに感じた朝の鼓動を
握りしめた瞬間
誰かの声を聴いた
声はだんだん大きくなり
少しずつ人のかたちになる

ひとの姿をしたその声は、
猜疑の光を湛えた少女の瞳を持ち
あの刃に似た針の先を持つ凶器で
私に襲いかかる

気がつくと、
私の諸手はぐっしょりと
血に濡れていた
床には血に濡れた凶器が落ちている
私は少女を刺した
しかし鏡を見た瞬間、
私は倒れた
私の腹には凶器が突き刺さっていた
刺したのは少女ではなく、
鏡に映ったもう一人の私だった

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