年末の流し台/為平 澪
 
私たちは確かに同時代に並べられただけの
安直な食器に すぎなかったかもしれない

たった二人しかいない母と子が 流し台に溜めたお椀や皿や鍋は
この家にいた六人分の家族のすべてを洗い桶に入れても はみ出る

鈍い光を放つ油の汚水を 
埃と黒いカビに蝕まれた蛍光灯が点滅を繰り返しながら
玉虫色のとぐろを映し出す

指の曲がらなくなった母の代わりに重い腰を上げると
それらを洗って片づけてしまうことに罪悪感が走る
(片づけて、そして、あるいは、捨ててしまえたなら、
とても遠く、重い、その、流し台の時間を終わらせるまでの距離
  
   引き返せばよかったのか(洗っても、洗って
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