幽霊と虎/片野晃司
 
ってきて引き裂かれて、またぼくの知らない誰かがやってきて引き裂かれて、それからまたぼくの知らない誰かがやってくる。

食べられるのがぼくだったらよかった。頭からでもつまさきからでも食べてくれたらよかった。ぼくをばらばらに引き裂いて、ぼくのはらわたを引きずり出して、床の上できみが食べてくれればよかった。ぼくの大切なすべてをめちゃくちゃにしてくれたらよかった。きみがときおりしゃぶる骨のひとかけらがぼくの骨ならそれでよかった。部屋には檻があって虎がいて、誰かがやってくるのを待っている。

夜になると背骨が痛んで、脊髄は川を越えて、骨盤は丘を越えて、肋骨の奥が痛んで、追いかけて、何度も吐いて、炎を
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