古書店のカウンターで/服部 剛
 
やあ、とふらり訪れ
古書店のカウンターに
腰を下ろし
ぶれんど珈琲を一杯

久方ぶりの店主の友は
外出中だけど
カップが空になる前に
間に合うかな?

じっくり苦みを味わうひと時に
身を置いて、待ってみる

(何処かで烏がカアカア鳴いても
 帰らずに「パリの悟り」の頁を開けば
 ずっと探していた
 旅の秘密が
 幾千の文字の裏側に隠れている)

無精髭ものびたまま
ヒマ人を装い
珈琲カップを傾ける
夕暮れ時

カウンターの隅に置かれた
小さなツリーに
浪漫の欠片が、明滅する

店内に流れる
ゲーリースナイダーの
呪文の朗読に、呼応して  





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