刃の指/あおい満月
 


耳のそとがわから
ことばのない唄が
聴こえてくる。私
はそのわずかな毛
先のような音の足
跡を追いかけなが
ら風に逆らう。風
は足跡の先を掴み
ながらふりはらう
。この目に映る絡
まりあった偽りの
真実を。ふりはら
われたこの肌は生
まれたてすぎて寒
くて怖い。生まれ
たての子どもは初
めて触れられた手
を信じてしまう。
その手はもしかす
るとこの目を潰し
にくる、やわらか
熱い鋭い刃の指の
さきであるのかも
知れないのに。

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