羽根の目/あおい満月
赦さない繭玉のようなバリア。それ
は今に始まったことではない。出会った頃から、彼女は
欲しいものにバリアをかけて、風が吹けば飛んで行って
しまう自分の身体を支えてきた。それは夜になっても続
く。深夜に鳴る悲鳴のコール。膨らんでいくビニール袋
のなかの鬱憤と猜疑心。受話器を取ると洪水になる。彼
女は泣いている。(ユカがね、最近私を無視するの…。
私の何がいけないの?もうあんなやつ大っ嫌い!死ね、
みんな死ね!フジコだけは私の傍にいてね!)まだ十七
歳の私の心は縄で絞めつけられて、南京錠を両腕に掛け
られたように苦しくなる。生き物が棲みついた。ゴキブ
リだ。カオリのゴキブリの羽根
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)