羽根の目/あおい満月
 
                  
ふたつの卵のような目をした彼女と向かい合っている。
卵は茶色く黒い。ゴキブリの羽根だ。ゴキブリの羽根が
ドリアを食べる、私の口元をじっと見つめている。羽根
は記憶している。私の咀嚼の回数、口の動き、制服の胸
のリボンの位置を。羽根の目は、私の手元に視線を移す。
私の爪の色が血の色に見えてならならないらしい。羽根
は、それも食べながら海馬のそこに摺り込ませていく。
ドリアの店を出た私と彼女。彼女は何故か私の手をきつ
く握る。彼女の手はいつも白く細く冷たい。その冷たさ
が世界にバリアをかけていく。強烈なバリア。私と自分
以外は入れることを赦さ
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