玩具/あおい満月
落ちていくものを拾おうとすると
指からすり抜けていく苔のような
ぬるりとしたものを掴むような感
覚が視界の奥底にある誰もが知っ
ていてまだ見たことのない小さな
彷徨える場所で揺れている。その
場所にいつも立っているのは、私
のよく知っている声と、手のぬく
もりを持っている人で、私はその
人とは重なり合っては離れて、離
れては重なり合ってきたけれど、
結局今は揺れるように同化してい
る。あなたを憎んだ日々もあった
。あなたが作った鳥籠など片手で
いつだって壊すことができたけれ
ど、本当の鳥籠は、私自身が作っ
ってしまっていたのだ。
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