家出娘/為平 澪
 
肉体の、
肉体の檻が邪魔だ
空間をよぎって その声は
いつも私を焦らせる

部屋を暗くして闇にうずくまる
部屋の心音と私の動悸が重なって
あらゆる、存在に理由を付けたがる私の思考が
膨大な情報を流し込み細胞から壊死させていく
追い詰められ逃げ場所をなくした私の、
吐く息の温度を奪い、呼吸が酸素を求めて 
外景の底を這いずり回る

薬はカプセルの中にしまわれているのが幸せ
   でも、薬を飲まなければ、あなたはあなたの激情で
   頭ごとあなたを、壊してしまうでしょう
      (私は囲われているものはみんな嫌い)

電車に運ばれていくときは一人が当たり前だった
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