午前のアトリエ/ヒヤシンス
 

 午前のアトリエに光は射し、人はいない。
 淡いキャンバスに薄くデッサンが描かれている。
 海だ。
 透明で純粋な世界がそこにあった。

 時間と空間の概念をその筆に携えて、
 その海は何色に染まるのだろう。
 木曜日が好きだ。
 それでも毎日が木曜日じゃ木曜日の世界は広がらない。

 静かな平日は人生の緩徐楽章となり、
 人もまばらな桟橋は新たな支柱となる。
 そこから眺める大洋は血潮の滾る挑戦だ。

 庭へと続く大きなガラス戸から自由に風は出入りし、
 アトリエ越しにレースのカーテンをたなびかせている。
 未完成の絵はただ静かにその作者を待っている。
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