午前のアトリエ/ヒヤシンス
午前のアトリエに光は射し、人はいない。
淡いキャンバスに薄くデッサンが描かれている。
海だ。
透明で純粋な世界がそこにあった。
時間と空間の概念をその筆に携えて、
その海は何色に染まるのだろう。
木曜日が好きだ。
それでも毎日が木曜日じゃ木曜日の世界は広がらない。
静かな平日は人生の緩徐楽章となり、
人もまばらな桟橋は新たな支柱となる。
そこから眺める大洋は血潮の滾る挑戦だ。
庭へと続く大きなガラス戸から自由に風は出入りし、
アトリエ越しにレースのカーテンをたなびかせている。
未完成の絵はただ静かにその作者を待っている。
戻る 編 削 Point(6)