謝肉祭/あおい満月
それでも必死に母親に手を伸ばしている。
母親は怒鳴りながら、なおも赤ん坊の頭を
壁に打ちつけ続ける。(あんたなんか生んだ
せいで私の目が潰れたんだ!私を返せ、返
せ、返せ!)赤い海の波が岩にぶつかる。
岩は砕けてまた一つ、新たに始まろうとし
ている赤ん坊の未来が潰れていく。赤ん坊
を壁に打ち付けていた母親はそれに飽きて
赤ん坊を放り投げて分厚い硝子のコップに
注いだ赤いワインを飲み干す。月は赤く朧
**
目を覚ました時、娘の世界は片方が黒く罅
割れていた。額には血が流れた痕があった
。娘は知る。母親が自分のことを殺したい
ほど愛しているのだと。母親は、娘だった
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