死を語るなら/のらさんきち
 
生きていたいという人に
死にたい人の心が分かるものか

「いつか良いことがあるでしょう」

暢気な予言者よ
骨は軋み、心は張り裂けんばかりの明日を
迎える準備はできているのか


死んでしまいたいという人に
死にたい人の心が分かるものか

「ああ!俺もこんなに苦しい思いをしているよ」

悲運の英雄よ
一時の恋を失っただけの幼い孤独に
頷く準備はできているのか
あるいは
家族を、全てを奪われた果ての絶望に震える肩を
抱き止める準備はできているか


死は野辺の草とこそ語るがいい
渇きや病に見舞われようとも
生命が破壊されるまで死ねぬ草と
傲慢な靴に身を踏み折られようとも
抗い逃れる術を持たぬ草と

あるいは森の木々とこそ語るがいい
親しき虫や、草や、鳥たちの死を見送るばかりで
我が身独り立ち続けねばならぬ木と
傲慢な人の営みを支える優しさを
チェーンソーで切り裂かれてなお黙する木と
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