夢夜、四 獣の影と永遠の放課後の廊下?/田中修子
 
 ここはひそやかな放課後が続く学校の廊下だけが永遠につらなってできている。壊れて積み重ねられた机と椅子が、防音ガラスの窓から差し込んでくる青みをおびたピンクの夕日に、金色の埃を浮きたたせ、影を濃くしてどこまでも続いていた。
 さいごにだれかが放ったさようならの声だけが、耳のおくに痛いほど響いてくる。

 つらなる廊下を私は、あんまりに大きい、獣の黒い影から逃げていた。獣の影は、うしろの廊下をすべて食べて飲み込んでぐちゃぐちゃとかみ砕き、青ピンクの夕日も金の埃も、数十人が使って壊した笑い声や鉛筆のさらさら鳴る音のつまっている机も椅子も、すべて光を吸い込んで反射させずに、ほんとうのねっとりとした
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