孤独と呼ぶには幸せ過ぎる、或る日のこと/のらさんきち
 
十一月十八日の雨の中
独りで街を歩く
私はひどく寒そうにしていた
晩秋の冷気は
誰の肌にも等しく訪れるというのに
片や暖かさは
幸せを選んで賢く舞い降りる

洒落た厚手のコート
小さな姉妹のお揃いのフード
かじかむ手と手を絡ませて歩くデート
鉛色の街にはぽつりぽつりと
鮮やかな心が花咲いていくのだけれど


少しだけ懐の暖かかった私は
私にマフラーを買ってやることにした
上等でもない安物の
ワゴンセールの半額品
それはいかにも私に似つかわしくて
私は私に感謝した
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