鏡に映る人/服部 剛
 
誰も自分の正体を知らない

一生、気づかぬ人もいる
思春期に一度気づけど、
結局まぼろしの人も

ひとりの部屋で
鏡に映る自画像は
右と左が逆だし
ああ俺は!
一生涯、己の姿を視れぬとは

だからせめて
自分という名の着ぐるみを
皮袋にして
(光と闇の混濁を、合わせ飲む)

日々現れる
愛しい人間と奏でる
場面の最中(さなか)で

自らの中に――光の錨(いかり)を下ろしてゆく
魂の部屋を照らすまで 





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