おじいちゃんの密談/鶴橋からの便り
 
「正治、俺は天皇陛下殺しに行くで」と
僕に話しかけてきた
そのおじいちゃんの話を聞き
「今は警備が厳しいから
警備が緩くなったら教えるわ」と答えた
おじいちゃんは
「わかった、正治」と言って
心地よい眠りについた

おじいちゃんは若い頃
徴兵され中国戦線に派遣されていた
万里の長城を占領するために
飢えをしのぎ
泥水を飲み
おたまじゃくしを食べた
四三二名の部隊の生存者は一三名だったという

そして敗戦
戦後おじいちゃんは
二度と国に使われたくないと
軍人恩給を拒否した

僕の記憶の中のおじいちゃんは
孫にとって
優しい人間だった
いっしょに銭湯に
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