fall into winter/カワグチタケシ
 
夜はまだ浅い
通りは静寂だ
ドアが開きドアが閉じる
そのあいだだけ
店内の喧騒が通りに溢れる
闇が深まる
夜はまだ浅い

期待が大きい分、失望も大きくなる
まだ柔らかいアスファルトに膝をついて祈る
アスファルトの温かさが繊維を通して膝に伝わってくる
黒い油が膝を汚す
一度洗っただけでは落ちない汚れを

細い指で胸をさすって糸をひきだしていくような
歌声が聞こえる
すべてはどこかでつながっている
と、うたっている
だが、彼女は知っているのだ
命の残るあいだに
決して交わらない線もある

人が指を差すから空はそこにある
悲しみのない自由な空
聞きたいのは
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