幻聴/無限上昇のカノン
歌声が聴こえる
夜の海を越えて
さざ波のメロディに乗せて
誰かが歌っている
外を見れば灯り一つ見えない漆黒の闇
しばし アリアに聞き惚れる
私以外にも眠れぬ夜を過ごす誰かがいることに
ほんの少し安堵する
美しい歌声は唐突に途切れて
波の音だけが聴こえる
誰が歌っていたのかわからぬまま
闇を見つめる
あれは幻聴だったのか
眠れぬ夜が運んできたのか
気が付けば東の空は白み始め
新しい朝がやってくる
アリアを聴いて
心穏やかになった私は
やっとベッドにもぐり込む
波の音を子守唄にして
浅い眠りにつく
誰かがアリアを歌っている
夢の中でも歌声が
耳について離れない
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