ジャンヌ・ダルクの築いたお城 蛸/田中修子
れた。
私が本当に旦那に惚れたのは、あの女を知っているというその瞬間だったと思う。因業なものだ。
おさないとき、スっ転んでよく怪我をした。
抵抗力をあげるためと、だいたい、放置だった。
そうして私は、自分のかさぶたをはいではよく食べていた。傷が治りきるまえのじゅくじゅくを引っぺがして、またあたらしい赤いのが滲む。また真ん中のほうからこぎたないうす桃茶に盛り上がって、かたまってくる。
自分をたべるのが好きだった。自分で自分の傷を愛していた。
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