サヨナライオン/やまうちあつし
いやあ
ずいぶん立派になって
驚きのあまり
思わず声をかけてしまった
かつて姿を見ていたときには
話したことなどなかったけれど
わたしたちはしばらく
公園を散歩することにした
歩きながら
わたしは話した
これまで見かけたときのこと
その度の大きなサヨナラのこと
そしてしばらく姿を見なかったので
さきの震災で
死んでしまったと
思っていたこと
ライオンはそれには答えず
静かに口を開いた
低いがよく通る声だった
「あれが純
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