サヨナライオン/やまうちあつし
ライオンは静かに
けれども威厳に満ちた面持ちで
横たわっていた
どこかさっぱりとした表情の祖父に
ベッドの下に潜んだ猛獣について
尋ねてみるような野暮はしたくなかった
その息遣いを感じながら
祖父が眠りにつくのをいつまでも
眺めていたかった
わたしが仕事についてから間もなく
とても大きな地震が起こった
多くのものが消え去った
そのうちのほとんどは
別れを告げる暇もなく
当然のことながら
さしたる理由も知らされないまま
この世から立ち去った
地上
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