サヨナライオン/やまうちあつし
 

   カラスのサヨナラのように真っ黒くも
   キリンのサヨナラのように期待しすぎもしないだろう
   ましてやわたしのそれのように
   隣家にいつのまにか
   見知らぬ神が住み着いてしまったかのごとく
   銀色に輝くものでもないだろう

   ライオンが右手を上げた
   西から涼しい風が吹き
   タンポポの綿毛が一斉に舞い上がった

   ライオンの口元が
   四度うごめく

   空を見上げれば
   信じられないぐらいに
   燃えている
   
   天国が
   火事

   ライオンの姿はなかった
   さすが、百獣の王だ




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