綿パンツ/zenyama太郎
山小屋で隣どうしになったオジサンの話である
北アルプスの高い山に初めて登ることになったので
登山専門店へ服を買いにいった
口ではうまく言えないので
今持っている服を持っていった
そして高山用の服装一式で登ってきた
ところが登っている途中に冷たい雨に遭って
びしょ濡れになった
せっかく買ったレインウェアは
面倒臭くなって使わなかった
山小屋に着いて自分の体で
暖めて乾かそうとしている間に
腰の辺りが冷えてきて
手が痺れるようになった
いろいろ聴いているあいだに
なぜ腰の辺りが冷えるのかが
分かってきた
それは
パンツが綿パンツだったからだ
パンツだけは
登山専門店の人もアドバイスしてくれなかったから
ふだんの綿パンツをはいてきたということだった
外見は立派な登山スタイルでも
パンツは綿という登山者が
ほかにもいるような気がしてきた
戻る 編 削 Point(0)