本とは/小川麻由美
静かな佇まいのその本を眺め
どうしたものかと悩む毎夜
恐る恐る手を伸ばし
紙の感触を確かめるかのように
つかみ私の近い所に引き寄せる
一連の動作を繰り返し続ける
まるで誰かに指示されてるような
義務感に追われているような
そんな感覚でもって手にする
その本の装丁に魅惑されつつも
心なしか嫉妬が含まれているようだ
果たして私は扉を開ける事が
できるのであろうかという困惑
本は自分を開いてもらうのを待つ
色んな手法でもって待っているのだ
私はその事を知っている
なのに石膏像のように静止する
静止した私 静止した本
平行線を引きながら
決して交わる事はないのか
実った本は収穫を待つ
待てる事は本の長所と言える
仲間と集まり粛々と待つ
精かんな姿に惚れ惚れする
本とは そういった姿をとる
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