好き嫌い/ただのみきや
 
笑い声は好きじゃない
怒鳴り声も号泣も
演説も告発も
講壇やテーブルをガンガン叩くのも

古い写真の笑った顔が好きだ
どこかの いつかの 誰かさん

笑い声は好きじゃない
だけど幼子は別
笑い声も 泣き声も
四六時中だと余しもするけど

かっこはつけているが生きることに不慣れな男と
自信のなさを隠せないで遠慮がちに甘える女の
なにかが重なり合い うちとけた(気がして)
少し浮いたトーンで嬉しそうに
言葉を掴んだり差し出したりする様を
通りすがりに見るのは嫌いじゃない
修羅場を見るよりはよっぽど

誰かの気まぐれアスファルトに咲く徒花
鏡の前で恋の仕草する
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