その井戸/為平 澪
 
夜、仏間でおつとめが終わり最後の合掌を済ますと、決まって
庭の古井戸から、ぽちゃり、と何かが落ちて、沈んでいく音が
する。         


私の中に井戸ができた。悲しいことがあるとそこに、
〈 〉を投げ込んだ。深い井戸だし、水もたっぷりあ
るように見えた。その証拠に井戸から続く蛇口をひね
ると、井戸に投げ込んだ〈 〉からは〈 〉とは思え
ないような浄化された湧き水が飲めた。私の他に井戸
を持っている人がいなかった。みんなが持っているの
は、ため池だったので、日照りが続くと水がなくなり、
村人は、池に自分が捨てたものが見つかるのを恐れて、
私の水を分けてくれるよう、
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