草蜻蛉に/
Lucy
塞がれた傷なら
新しいほど
ほの明るい
命と呼ぶには薄すぎる
生まれたばかりの緑の雲母は
はかなげに震える風の欠片
アスファルトに跳ね返る
光の刃が
明日には切り刻むだろう
分厚く
傷を盛り上げて
凶暴な季節にたちむかおう
夜を渡る河に浮かべ
失語した恋の由来を
解き放つ
もうすっかり葉を落とした木立のように
目を閉じて
煌めきながら羽ばたいていく
小さいけれど
強い命を見送った
空は光を滲ませる
深い雲の傷口に
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