生まれる日/あおい満月
彼方から雨が降ってくる。その雨たちを束ねて
鋏で切って海を千切りたい。鎖につながれたこ
の心は固まったまま四角の水槽を往来している。
夢を見ることも赦されずに、花咲く季節も見れ
ないまま私は歳を重ねていく。そんな私に、あ
なたは手を差し伸べてくれました。あたたかな
煌めく光のなかで、私たちはひとつになった。
そこに、愛が生まれた。誰も知らない愛が。落
葉が落ちていく。季節がまたひとつ逝ってしま
っても、私にはあなたがいる。この真実が私の
魂をあたためている。私もあなたをあたためる。
あなたは声を発しないけれど、しっかりと私の
熱は伝わっているのだろう。あなたの微笑みが
見える。月が満ちる声が聴こえる。その声の方
へあなたとともに行きたい。愛の生まれる夜へ。
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