生きざま/吉岡ペペロ
 
勾留されて取り調べを受けた。一日めでいちいち真剣に返答していたら体もたないことに気づいた。取調室に向かう際かならずロッカーを通る。そこでだけしばらく時間が潰せる。ロッカーのなかにノートを広げて今日のここまでのやりとりを記す。そしてまた取調室。尋問にしばらく目を閉じて思い出すふりをした。そのまま寝る。叩き起こされる。それを要所要所で繰り返す。誰が自白したとか、会社はこう証言しているとか、揺さぶりをかけてくる。
会社はクビになり、有罪判決を受け、もちろん新聞にも載り親戚からは縁を切られた。
娘の就職の内定は取り消されて、もうひとりの娘は高校をやめた。妻も鬱状態になったが、引っ越しはしなかった。
私利私欲を満たした訳ではない。ここで家族がばらけてしまうと、家族のために生きざまを見せられなくなると思ったから。





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