彼岸花/あおい満月
 
花びらを握りしめた
手のひらをそっとほどく
花びらは蝶になり
夜明け前の赤い空へむかって
円を描きながら飛んでいく


指先から聴こえる
川の鼓動をたよりに
目を覚ました足で
鼓動が聴こえる方へと歩いていく
暗い冷たい壁を伝いながら歩く


彼方に金色の光がもれている
誰かの声も聴こえてくる
楽しそうな声だ
歩いても歩いても彼方は遠い
何度も転びそうになりながら辿りついた


その場所には死んだはずの祖父と祖母がいた
笑っていたのは幼い日の母と叔父だった
金色の世界には滝が流れていて
水の色も金色だった
金色の魚たちが話しかける



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