赤目の夏/為平 澪
 
透けすぎたナイロン袋に絹豆腐のラッピングパックの角が刺さって破れ
る。都会の余波が、障子のすすけたような町にも、ずっしりやってきた。
私の伸びる指に、深く彫刻刀で削り取られた縦長の皺とそれを映す充血
した目。赤目が飲み込んできた都会の水は、私の身体を浸し続け、不純
物と一緒にパックされたこの塊の、はみ出したい鋭さにも似て、また、
目を赤くさせた。

                ※

充血した目玉たちが口も聞かず蛇に次々と飲み込まれ腹の内側、内側に
押し込められ追い詰められる早朝。優先座席で目を閉じたふりをするア
ロハシャツの若者を赤目が刺し、俯いて座るセーラー服
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