夢幻/ヒヤシンス
 

 思い出の公園でブランコが揺れていた。
 横浜に降る霧雨は仄かに青色で。
 なぜだか僕は独りぼっちで寂しくて。
 今在る幸せに気付く事も無かった。

 誰もいない公園で僕はブランコに揺られていた。
 大人に為り切れない自分が嫌いだった。
 少年から大人への境界線が分からないまま、
 いつしか僕はブランコに乗らなくなった。

 今、僕は揺れているのか揺らされているのかすら分からない。
 僕はいつでも希望の花道を求めていたはずなのに。
 道に花は無く、清らかな風に吹かれる雑草も無い。

 夢も希望も無い言葉を書き連ねて、万年筆のペン先を自分の腕に突き刺すと、
 朱殷に染まった液体が飛び散りもせず、じわじわと指先まで垂れてゆく。
 夢幻の中でもっと早く詩という魔物に出会いたかった。 
戻る   Point(3)