朝/Lucy
眠っていたのだ
死んでいたのだ
意識のはざまで
行方知れずになっていた
辛うじて煌めく記憶が
呼び戻そうと身を捩る
わたしの裏で
呼ばれているもう一人の
耳は 形を亡くし
地に落ちていた
それで別段 暮らすのに不便はなかった
とうに眼(まなこ)も 洪水に流され
口も 焼け焦げ
言葉も
いらなかったのだ
裏返し 問い詰めて
掘りおこし 暴いて
切り刻んで 煮詰めて
抽出して 上澄みを貪り
その都度生き返るための行程としての
背中に
張り付いて生まれ
寄生したまま腐り
乾燥して粉末になり
飛散した
あれは羽だった?もう一人の
意識
忘れても生きていけると思ったとき
諦めていた再生が今こそ成就したのだろうか
睡魔のように
わたしを引きずり倒しながら
曖昧な凶暴な空虚な救済が
霞のかかった朝(あした)のように
白々とわたしを迎える
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