わがままな水/草野大悟2
 
 佇んでいる。
 びたりとも動かない水だ。
 この夏、そんな水を見た。
 早朝、いつものように堤防道路をのったりと散歩している時だった。ぼくは、不意に気づいたのだ。音がしない! いつもの音がしない(あれっ、いつもの音ってどんな音だったっけ?)
 川を見た。
 青鷺が一羽、過去と未来が激しく交差して渦を巻く川の中央にすっくと佇んで、水を見据えていた。ここまでは、日常の風景だ。彼(あるいは彼女)が一心に見つめる水面に視線を移して仰天した。
 水が流れていない! 過去も未来も凝固している。
 そんな馬鹿な、と目を擦ってもう一度視線をこらした。
 やはり、動いていない。道理で静かなはずだ、
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