湿気/みぅと
 
生暖かい風に乗って甘い香りが届く。
紅い唇がおいでと誘う。

体の他のどこにもないようなその鮮やかさは、紅色だけが浮いているようだった。
あの香りはお前かと聞くために僕は近づく。

細い腕が僕を絡め取る。
瑞々しく柔らかいその腕が茂みへと導く。

湿った土に押し込まれ、毛の生えた足に掴まれる。
僕は茂みと土にすっかり隠される。

体と同じ色のドレスの裾を揺らし、甘い香りを放ち始める。
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