グレーピンクのモーツァルト/Lucy
薔薇の蕾は美しい
少しづつ開いていく姿も
この世のものとは思えないほど艶かしく美しい
だが咲ききって
たちまち黒ずんでいく花芯も露に
剥がれ落ちるのを待つさまは
あまりにも見苦しく
痛ましい変貌を見ていられなく
8部咲きくらいのところで
もう切ってしまいたい衝動にかられる
次の蕾のためには早めに切ったほうがいいのだが
もう少し咲いていたいのにと
花が泣いているきがして
ガラスのボールに汲んだ水に
切った花首を浮かべてやる
束の間の気休め
命の終焉を目前にして
潔く散り墜ちる前に
醜く変貌しなければならない
無惨な花の運命を
敢えて擬人化したくない
頭の中をからっぽにしながら
チョキチョキチョキとハサミを鳴らす
今年初めて花を付けた
コンスタンツェ
モーツァルトという名前の品種
カタログを見ると花弁の数が100枚以上とある
蕾は意外に強い赤
開き始めると
おとなしい薄い色
覗いても
幾重にも重なりあったままの花びら
全部開き終わらないうちに
ハラハラ散ってしまうのだった
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