朝昼夜)顔のない花/黒崎 水華
 
背中を左右に開いて
川の水が溢れ出した

(孤独な独白が掘り起こされる)

胸骨の狭間を裂いて
海の水が零れ出した

(虚言を齎す陽が差し込む)

真白い骨が尖ってゆく
鏡の中で番犬が唸っている

跫音ばかり憶える耳が
幻聴と空耳を抱いて貝に成る

(月が虚無と虚言を宿す)

妄言に含まれた4月の指が
中指だけを失くし  た

舌先が痺れて青紫に染まる
地面の上へ落ちて蔓を伸ばす

あれは美しい嘘でした、ね。」


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