散文/哉果
 

どうせいつか死ぬんだから、が口癖の昌孝は、だからわたしが結婚しようって言った時も素気無く断られてしまった。
「どうせ死ぬんだから」
俺が死んで灰になったらきっとお前は泣くんだろう、俺の仏壇の前でしんみり鐘を鳴らして手なんか合わせちゃって、仰々しい黒檀色の箱に向かってぶつぶつと恨み言を言うんだろう。
「そんなの御免だね」
反吐が出るとでも言いたげな眉間のシワにそれでもこれ以上強い口調で言葉を続かせないように、一度唇を結び直す彼はやはり優しい人だなあと勝手に感じ取って頬が熱くなる。
「なんで?いいじゃない、わたしはあなたと結婚して、あなたが死んだ時にはあなたが死んだことで泣きたいよ」

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