吹く風に/ヒヤシンス
 

 吹く風に捕らわれた身は山を駆ける。
 幾たびも過ぎていった時を頼りに。
 先人達の漲る力に生を覚えて、
 村はずれの舗道にただ立ち尽くす。

 吹く風に捕らわれた身は川を渡る。
 輪廻の郷愁をその胸に宿して。
 海へと注ぐその水の清らかさ。
 時に悪をも魅了するその桟敷。

 辿り着いたは悲しみか。
 辿り着いたは喜びか。
 遍路の姿に涙する。

 巡る足跡、露と消え、
 後に残るは魂の遍歴。
 身はやつれ、それでも生きる、吹く風に。
戻る   Point(4)