夏の扉が開かれる時/そらの珊瑚
遠くで雷が歌っている夕刻
羽が生えた蟻をみつけた
それは
退化だろうか
進化なのだろうか
いずれにしても
この世界にとどまる現実の形だ
つぶされないうちに
飛んで逃げればいいのに
なぜか所在なく歩いている
それとも
羽は飾り物で
飛べるなんて幻想なのか
そしてまた
飛べたら自由になるなんて
幻想の極致かもしれない
北極の熊を想う
どんなに冷たくても凍らない黒い瞳を想う
私の中の極北へは
もちろん羽がなくても行けるのだが
うっかり肝心の呪文を忘れてしまったみたい
雷を浴びてしまったせいだろう
硝煙の匂いがする(始まりの合図)
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