未完のソルテ/ハァモニィベル
 




背を向けて一人の男が寝ている。
一言の口も利かず、黙って、
かなり前から ずつと、
長い ながい時間
心はうたっているのかも知れない 
新しい悲しみを

そして
南極星の眼をひらき  孤独と晩餐を共にして、
色あせぬ唇で 音もなく核(たね)を 噛みくだく

風の死んでいる熱帶の岸辺に  
流れ寄る息が よろめきながら なんと云うさびしさで 

ひどく、なゝめに 強く傾むく…

葉影に、灯が一つともるたび
なにもかも そこに 
見出してしまいた気に

砂丘の上に生えた美しい寂しさを
果てもなく転がしていく

椰子の殻に詰めた爆弾と伴に

 驟雨のような火焔樹

のしたまで




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