「金平糖」 一〇首/もっぷ
 
潮風に抱擁されてポチはいま天に召されてゆきました


小母さんの嘆きがたとえ届いても返せぬポチの無念の眠り


ほんとうに一瞬のことでありました轢かれ引き摺られて五メートル


小母さんのピンクのエプロンひたすらに目指してポチは赤信号を


港町夕焼け市場の一同がなぐさめてさえ「ポチは帰らぬ


真夜中の二時か三時という頃に砂浜でゆれる人影ひとつ


小母さんはどうしたのかなという声を呑み込んでゆく波の回廊


朝が来ていつものように朝は来て小母さんとポチがいないだけです


朝が来ていつものように朝は来て小母さんとポチがいないだけです


朝が来ていつものように朝は来て小母さんとポチがいないだけです


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