悲しみ/宣井龍人
脳界で繰り返される感情のバトルロイヤル
ここのところ悲しみのトロフィーでいっぱいだ
私は支配することができず支配されている
悲しみの赴くままにペンを走らせたが
描いた悲しみは悲しみではなかった
塩辛く固まった文字は悲しみではなかった
紙に滴るペン先も悲しみではなかった
私の腕を伝わらない悲しみの生命
遺された悲しみは一滴も溢れてこなかった
悲しみは血液やリンパ液を食い破り隈なく浸透する
私自体が悲しみという生物に成り果てるその日まで
回り続ける来る日も来る日もその日まで
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