瑞産(みずうみ)/アタマナクス
 
自ら牢獄の鍵を掛けた
中に暗雲が立ちこめた
濁流に呑まれて溺れた
己の血の混じる泥を食べた

憎しみが澱み怒りが沸騰し
蒸発するそれは水のように
俺の瞳から涙のように
流れてやまない 小川のように

悲しみとはまるで違った
透明な感情がそこにあった
胸の辺りが何故か暖まった
扉の隙間が 光った


長かった嵐が去った
晴れ間が雲を割った
まるで嘘みたいだった
戸惑いながら笑った

さらば、さらば
俺と共にあった嵐よ
さらば、さらば
俺の友であった病よ

いま俺のみずうみは凪いでいる
だから自分で漕ぎ出していく
祈りのコインをみなもにはじく
まなざしの行く先へ試みる

これからはなにもかも新しく
果てのない空を見れば恐ろしく
しかし震える手足で舵を切る
はだかのからだで風を斬る
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