青春の小道(小詩集)/宣井龍人
 
【街景】
感覚というものに訴えたのは
騒めきの嵐
取り留めのない言葉の流れ
舞い上げられた人間の叫び
雑踏とした街並に咲く
毒づいた偽りの花
もう震え上がった真実を
覆い隠す暇は無い
犯された鋭利な刃物を捨て
心の隠者に化けてしまえ


【風が春を呼んでいる】
風が、人の耳を、コチョコチョ、と擽って
ソヨソヨ、という音が生まれた

まだ、大地は白い布を被っている

凍りついた雲の涙を、思い出とするには
まだまだ、とても寒かった

空は青いが、押し出すようで
白い雲は、縮まることしかできない

そして、一人の人間には
無言という木が、立ちはだかった
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